認知症専門外来
認知症には大きく分けると「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」、「前頭側頭型認知症」の4つのタイプがあり、それぞれに特徴があります。
- 《 アルツハイマー型認知症 》
- 通帳やさいふ、印鑑などのしまい忘れ、置き忘れがある
- 同じ事を何度もくり返し聞く
- 最近の大きな出来事(冠婚葬祭など)を忘れる
- 季節や状況に合った服を選べない
- 料理の味付けが変わった(簡単な料理でもまちがう)
- 薬の飲み忘れがある
アルツハイマー病新薬「レケンビ®(レカネマブ)」による治療について
2023年12月からアルツハイマー病の新薬であるレケンビ®(レカネマブ)が保険適用となり、治療が開始されました。
レケンビは「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」に対する薬です。
アルツハイマー病では症状が出現する何年も前からアミロイドβという異常物質が脳内に蓄積しはじめます。このアミロイドβが沈着し神経細胞が障害されてくると脳の働きが落ち、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)を経て、アルツハイマー病へとゆっくりと進行していきます。
従来の認知症の薬は神経細胞の機能低下を補う作用を持つものですが、レケンビはこれまでの薬と違い、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβを除去することによって症状の進行を直接抑制する効果が期待出来る薬です。
≪ 検査の流れ ≫
レケンビによる治療の対象は「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」の方です。もの忘れなどの症状があり、その原因がアルツハイマー病であることを診断する必要があります。そのため、神経学的診察、神経心理検査(認知機能検査)、MRI検査、血液検査などを受けていただきます。
認知機能検査ではMMSE(簡易認知機能評価尺度)22点以上、CDR(認知症の重症度評価尺度)0.5または1の方が対象となります。
*CDR0.5または1の状態とは認知機能障害はあるが日常生活は自立している、あるいは服薬管理や金銭管理等の障害はあっても身の回りのことは自立している状態がひとつの目安となります。
副作用リスクの高い特有の所見(脳浮腫や脳出血。微小出血は5個以下)の有無を確認します。
アミロイドβの蓄積を調べる検査として、アミロイドPET検査と腰椎穿刺によるバイオマーカー検査があり、どちらか一方を受けていただきます。当院ではより侵襲の少ないアミロイドPET検査をお勧めしております。
*アミロイドPETは盛岡市の孝仁病院に依頼します(検査費用は1割負担で約15,000円、2割負担で約30,000円、3割負担で約45,000円)。
≪ 治療の流れ ≫
レケンビは点滴による治療薬です。2週間毎に1回1時間の点滴治療を行ないます。点滴後は1時間ほど経過観察をさせていただきます。治療に伴う反応として頭痛、悪寒、発熱、吐き気、嘔吐などの症状が出ることがあります。
治療は18か月行いますが、特に治療開始数ヶ月以内に「脳が腫れる」、「微小出血が起きる」などが報告されており、副作用発現の有無を確認するため、定期的に頭部MRI検査を施行する必要があります。多くは無症状ですが、まれに頭痛、錯乱、視覚障害、眩暈、吐き気、歩行障害などの症状が現れることがあります。
副作用が強く表れた場合、治療を中断、または中止する可能性があります。
≪ 医療費について ≫
レケンビ®の投与による費用負担の概算
体重 | 1回あたりの 使用薬剤 |
1か月(2回分)の 患者負担額注1 |
高額療養費 上限額注2 |
---|---|---|---|
50kg | 500mg×1瓶 | 1割:22,888円 2割:45,777円 3割:68,665円 |
1割:18,000円 2割:18,000円 3割:適用無し |
60kg | 200mg×3瓶 | 1割:27,466円 2割:54,932円 3割:82,988円 |
1割:18,000円 2割:18,000円 3割:80,176円 |
注1:上記概算は薬剤のみ(診察や検査等を除く)の費用で患者負担額を示したものです。
注2:対象者の検査内容や所得によって負担上限額が変わりますのでご注意ください。
治療を受ける方の体重によって投与量が異なります。
レケンビは当院で投与可能です。
ご希望の方はお問い合わせください。
- 《 レビー小体型認知症 》
- 頭がハッキリしている時とそうでない時がある
- 実際にはないものが見える(幻視:人や小動物・虫など)
- 動作が緩慢になった
- 睡眠時に怖い夢をよく見たり、大声をあげたり、寝ぼけて起き出したりする
- 転倒や失神をくり返す
- 《 脳血管性認知症 》
- 脳梗塞や脳出血などが原因で起こる
- 脳卒中などの発作が起きるたびに段階的悪化を示す
- 意欲の低下や自発性の低下が目立つ
- ささいな事で泣いたり怒ったりする
- 《 前頭側頭型認知症 》
- 毎日同じ時間に同じような行動をとり、制止すると怒り出す
- 同じ食べ物、特に甘いものばかり際限なく食べる
- 無遠慮で身勝手にも思える行動をとる
- 万引きや信号無視のような反社会的行動をくり返す
- 言葉の意味が分からない
当てはまる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
初診の際は診察に時間がかかりますので、時間に余裕をもっておこしください。患者さんの日常生活を把握している方(ご家族やご兄弟)の同伴をお願いいたします。診療予約もお取りできますので、お電話でお問い合わせください。
脳卒中専門外来
- 手足の力が入りづらい
- 言葉が出にくい
- 手足がしびれる
- めまいがする、物が二重に見える
- ろれつが回りにくい
- 激しい頭痛や吐き気、頭痛がとれない
脳卒中には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などがあります。いずれもある日突然発症し、命にかかわるような重篤な症状や、重い後遺症を残したりする非常に怖い病気です。上記のような症状があれば、脳卒中の可能性があります。すぐに受診することをお勧めいたします。
また、脳卒中を発症された方は、再発を予防することが非常に重要です。定期的に受診と検査をお勧めいたします。
脳卒中の原因としては、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、不整脈などの心疾患が挙げられます。脳卒中を発症していない方でも、生活習慣病をお持ちの方、脳卒中の家族歴がある方は、発症予防のための基礎疾患の管理や、MRIで現状を把握することも非常に重要です。
特に予約は必要ありませんので、気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。
また、急患対応は随時行っております。
頭痛専門外来
頭痛専門外来では、頭痛全般について、詳しくお話を伺いながら診療を行います。
頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。一次性頭痛と二次性頭痛の鑑別のため、必要に応じて頭部MRI、MRAの検査を行います。頭蓋内の病変の有無を確認し、頭痛の鑑別診断(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、薬剤の使用過多による頭痛など)を行い、それぞれに合った適切な治療を行っていきます。より専門的な診療が必要な場合には、県立病院や大学病院と連携して治療を行います。
頭痛があるけど原因がわからない、頭痛持ちだが病院にかかったことがない、または病院で問題ないと言われたが頭痛が続いて困っているなど、少しでも気になることがあればご相談ください。
一次性頭痛
頭痛を起こすような頭蓋内の病変がない頭痛です。片頭痛、緊張型頭痛などがあります。詳細な問診と頭部MRI検査により診断します。片頭痛は20~50歳代の働き盛りに多く、日常生活に大きな支障をきたすことが問題となります。しかし実際には病院を受診し、適切な診断・治療を受けている方は未だ少なく、市販の鎮痛剤で我慢している方が大半です。
- 《 片頭痛 》
- 20〜50代の働き盛りに多く、繰り返し頭痛が起きる一次性頭痛の代表です。ズキズキと脈打つような強い頭痛で、体を動かすと痛みが増し、光、音、においなどの変化に敏感になるのが特徴です。また吐き気や嘔吐などを伴うこともあります。日常生活に支障をきたすことが多いことが問題点です。
- 《 緊張型頭痛 》
- 後頭部を中心に頭の両側や首筋、目の奥に、重苦しいような圧迫感が特徴です。一次性頭痛の中では最も多いタイプです。首や肩のこり、体がふわふわするようなめまいを伴うこともあります。主な原因としては精神的・肉体的ストレスによる首や肩、背中の筋肉のこわばりです。長時間のデスクワーク、長時間のタブレットや携帯の使用、睡眠不足などが誘因になります。片頭痛と合併して起こることも多いとされています。
- 《 群発頭痛 》
- 片側の目の奥からこめかみにかけて眼球をえぐられるような非常に激しい痛みがある頭痛です。痛みは数分のうちにどんどん強くなり、数分から3時間ほど続きます。発作はある期間に集中して起こり、いったん起きると1~2か月の間ほぼ毎日のように痛みが繰り返します。
二次性頭痛
頭痛を起こす脳疾患があり、それにより生じる頭痛です。脳出血、脳動脈解離(特に椎骨動脈解離)、くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎などが原因の場合には、入院での加療が必要になることがあります。その他緑内障、副鼻腔炎、三叉神経痛など多くの原因があります。
- 《 薬剤の使用過多による頭痛 》
- もともと片頭痛や緊張型頭痛などの頭痛を持っている人が、鎮痛剤を飲む量が増えていくうちに痛みに敏感になり、薬も効きにくくなってしまっている状態です。市販の鎮痛薬だけでなく、病院で処方された薬によっても起こります。薬がまったく効かない、または効いてもごく短時間しか効果が続かない状態となり、原因薬物の中止により離脱症状が出る恐れもあるため、適切な治療が必要です。
片頭痛予防薬について
片頭痛でお悩みの患者様に、当院では新たな選択肢として注射薬での治療を行っております。
日本では頭痛を訴える患者さんは4人に1人と言われており、その中で約3割を占めるのが片頭痛です。典型的にはズキンズキンという激しい痛みを伴い、日常生活が困難となる非常につらい頭痛です。
片頭痛は、様々な誘因を引き金にセロトニンという脳内物質が減少することで、三叉神経が興奮してしまい、CGRP(カルシトニン遺伝関連ペプチド)という血管を拡張させる物質が放出されます。このCGRPは、頭蓋骨にある硬膜や三叉神経に分布しており、片頭痛発作時の血管拡張や炎症反応の直接の原因とされています。
そこで登場したのがCGRPやCGRPの受容体に対して働く新薬で、抗CGRP抗体製剤(エムガルティ、アジョビ)と抗CGRP受容体抗体製剤(アイモビーグ)があります。
エムガルティについて
- ・抗CGRP抗体製剤(ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤)です。
- ・月に1回皮下注射を行います。
≪ 臨床試験成績 ≫
- ・6か月間の使用で片頭痛の日数が減った人の割合は50%減:59%、75%減:33%、100%減:11%。
- ・片頭痛発作がゼロになった例が10%を超えている。
- ・平均で月の片頭痛の日数が8.6日から3.6日分減った。
- ・片頭痛の日常生活の支障度(MIDASスコア)も改善。
- ・使用開始翌月には効果が出ている。
アジョビについて
- ・抗CGRP抗体製剤(ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤)です。
- ・ライフスタイルに合わせた2つの投与方法(4週間ごとに1本あるいは12週間ごとに3本皮下注射)が選択できます。
≪ 臨床試験成績 ≫
- ・反復性片頭痛患者において、50%以上減少した割合はアジョビ4週投与で1ヶ月目43%→2ヶ月目47.1%→3ヶ月目45.4%。アジョビ12週投与で1ヶ月目53.8%→2ヶ月目46.1%→3ヶ月目44.2%。
- ・平均で月の片頭痛の日数が8.8日から4週投与で4.00日分減り、12週投与で4.02日分減った。
- ・片頭痛予防薬を併用しているグループにおいても有効性を示した。
- ・片頭痛予防薬効果不十分グループにおいても有効性を示した。
- ・使用開始翌月には効果が出ている。
アイモビーグについて
- ・抗CGRP受容体抗体製剤(ヒト抗CGRP受容体モノクローナル抗体製剤)です。
- ・4週間に1回皮下注射を行います。
- ・抗体製剤の中でも、アレルギー反応や効果減弱が少ないとされる「完全ヒト化」製剤です。
≪ 臨床試験成績 ≫
- ・反復性片頭痛患者において、50%以上減少した割合は46.5%。
- ・64週投与後の50%以上減少した割合は64.8%。
- ・5年目経過後も中和抗体発現は0.8%。
- ・長期投与試験により安全性の確認。
- ・片頭痛の日常生活の支障度(MIDASスコア)も改善。
- ・使用開始翌月には効果が出ている。
使用方法
- ・いずれも4週間に1回皮下注射を行います。
- ・注射部位はお腹、太もも、腕のいずれかです。
- ・まずは3ヶ月注射を続け、効果判定を行います。
副作用について
- ・主な副作用としては、便秘や注射部位反応(痛み、腫れなど)、傾眠などが報告されています。
ボツリヌス療法
脳卒中の後遺症「手足のつっぱり/痙縮(けいしゅく)」で困っていませんか?
上記のような症状が長く続くと、筋肉が固まり、関節の動きが制限されることで、日常生活に支障が生じてしまいます。
これらの症状を抑える治療として、「ボツリヌス療法」があります。
「ボツリヌス療法」とは?
ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質、ボツリヌストキシンを有効成分とする薬を、筋肉内に注射する治療法です。ボツリヌストキシンには、筋肉をつっぱらせている神経の動きを抑える作用があるので、筋肉の緊張をやわらげることができます。
※ボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので、 ボツリヌス菌に感染する危険性はありません。
- <ボツリヌス療法で期待できる効果>
- ●日常生活での動作が行いやすくなる
- ●手足のつっぱりによる痛みが緩和される
- ●リハビリがしやすくなる
- ●介護の負担が軽減される
- ●関節が固まったり、変形するのを防ぐ
「ボツリヌス療法」の治療ステップ
第一回目の治療から理想の効果を得ることは難しいため、治療を重ねていくことで、最適な治療をつかんでいきます。
- 1ボツリヌス療法は、注射後2~3日目から徐々に効果をあらわします。
- 2効果は平均して3~4か月ほど持続し、その後は徐々に消えていきます。
- 3効果の持続期間には個人差があるため、医師と相談しながら次の治療計画を立てます。
- 4年に数回、注射による治療を重ねることで、最適な投与量や投与部位を見つけていきます。
ボツリヌス療法/注意点と副作用
- 療法前の注意
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- 現在ボツリヌス療法を受けている、または今までに受けたことがある方 → 疾患名、時期、投与量をお知らせください。
- 重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋委縮性側索硬化症がある方 → 症状を悪化させる可能性があるため、治療を行うことはできかねます。
- アレルギー体質の方、またこの薬でアレルギー症状が出たことがある方
- 喘息などの慢性的な呼吸器の病気がある方
- 妊娠している、妊娠の可能性がある、授乳中の方 → 上記3つの症状や状態にある方は、必ずお申し出ください。
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現在、使用している薬(市販品を含む)がある方
→ 同時に使用できない薬がありますので、市販薬を含めて必ずお申し出ください。
特に抗生物質、パーキンソン病の薬、筋弛緩薬、精神安定剤などを使用中の方は、効果が強くあらわれることがあるため、医師の指示に従ってください。
- 副作用
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- ●吐き気がする
- ●呼吸が苦しい
- ●全身が赤くなる
- ●飲み込みにくい
- ●けいれんが起こる
これらの症状が出た場合は、すぐ医師に相談してください。
このほかにもボツリヌス療法を始めてから違和感がありましたら、医師に相談してください。